WPPのマーク・リードCEOによると、ジェイ・ウォルター・トンプソンとワンダーマン、VMLとヤング・アンド・ルビカム(いずれもWPP傘下)に続く大々的な合併は今後予定していないとのことだ。
同グループの戦略について発表後、リード氏はCampaignの取材に応じ、WPPを成長路線に戻す「現実的で信頼性の高い」計画があると語った。
これが大胆さに欠けるとして、リベルム・キャピタルのイアン・ウィテカー氏など一部の金融アナリストが懸念を示しているが、リード氏はこれを否定。
「我々に野心が欠落しているとは思わない。人々が我々に望むのは、有限実行であること。そして、それこそが我々がやろうとしていることなのです」
今年春のマーティン・ソレル卿の辞任後に経営を指揮してきたリード氏は、2年連続で収益が前年を下回る同社の「急進的な進化」の一環として、コミュニケーション、エクスペリエンス、コマース、テクノロジーの4本柱に焦点を当てる。
約13万人ものスタッフを抱える世界最大の広告グループ、WPPをいかにしてクリエイティブ・トランスフォーメーション・カンパニーへと変えていくか。インタビューから以下に抜粋する。
発表された内容に対し、これは大胆さに欠ける、当たり障りのない戦略だとの評価が一部で見られましたね。
どのような視点から見ているかによって、変わるものだと思います。私が考えるWPPのチャレンジとは、ビジネスを成長路線に戻し、組織構造をより簡潔なものへと変え、クライアントにとっての我々のあり方を再構築することです。
コスト面でとるべき策はあるものの、我々はコストそのものについての課題を抱えているわけではありません。
VMLY&R、ワンダーマントンプソン、カンター(過半数の株式を売り出し中)は収益全体の4割を占めており、これらに注目すべきです。あるいは、全体の3%を占めるコスト面(3億ポンドの削減を予定している)にフォーカスしてもらっても構いませんが。
金融アナリストは、コストという視点からものごとを見る傾向にあります。
我々は、これまで実施してきたことと今後実施しようと考えていることを統括しようとしているのです。株式市場の反応は良かったと思います(株価は当初5%上昇)。
何名が職を失いましたか?
3カ年計画で、全体で3500名を予定しています。貯蓄の約半分を事業に再投資し、残りの半分は株主に還元します。
新規雇用の具体的な数字は出していませんが、我々が注目しているのはクリエイティブ、テクノロジー、新規事業やマーケティングなどクライアント対応における上席者です。
クリエイティブリーダーシップに、追加で1500万ポンドを投資していますが、どのような人材を探しているのですか?
(WPPの業績が思わしくない)北米で、クリエイティブ要員を強化しようと考えています。
大々的な合併は予定していないと発表されましたが、グレイ、AKQA、マインドシェア(Mindshare)、ウェーブメーカー(Wavemaker)などの合併の噂が絶えません。今後、合併は実施しないのですか?
大々的な合併によるネットワーク統合で、我々が計画していたものはすでに実施しました。エージェンシーの事業ポートフォリオ(事業領域)は考察していますが、主要エージェンシーの合併は、今後予定していません。
WPPがクライアントに提供する4本柱として、コミュニケーション、エクスペリエンス、コマース、テクノロジーを挙げていました。これらの柱それぞれにリーダーを任命し、WPPを整理する予定は?
いいえ、我々が重視しているのは、クライアントに何を提案するのかと、我々の事業の幅です。WPPの整理は、これまでのように、(エージェンシー)ブランドを機軸に行うものであって、4本柱を機軸としたものとはなりません。
執行委員会を初めて設立しましたね。ソレル氏が絶対に設立しなかった委員会を、あなたはなぜ必要だと考えたのでしょうか。また、誰が委員となるのでしょうか?
これは、WPPをチームとして運営していくことを象徴しています。メンバーは、人材や財務などさまざまな機能的役割を担う者、そして規模の大きな傘下企業のシニアリーダーなどで構成します。(リード氏は、委員会の人数や具体名については明かさなかった)
「クリエイティブ・トランスフォーメーション・カンパニー」へと変わっていく、ということの意味は? それは、クライアントが望むことなのでしょうか?
クリエイティブであることはWPPの本質であり、他社との差をつけるのはクリエイティビティー、成長、イノベーション、アイデアといった要素であるという意味です。
「トランスフォーメーション」とは、クライアントが事業変革を成し遂げて将来的に成功するための支援を、我々に求めてくるような存在となることを意味しています。
そして「カンパニー」には、我々がグループではなく会社のように、一丸となって動く必要があるという意味を込めています。一つの会社として団結するため、執行委員会が必要だったのです。
彼らのスキルを結集しようというのが意図です。
あなたは、WPPが同業社と共に、今後3年間でオーガニック成長(本業を活かした自律的な収益拡大)を目指すとしか語っていません。もっと大胆な計画を打ち出すこともできたのではないでしょうか。あるいは、期待を低く抑えているのでしょうか?
現実的で信頼性の高い計画を立てようとしています。我々はこれまで2年間でさまざまな課題に直面してきたことを考慮すると、2021年までに同業社と共に成長路線に戻すというのは、達成可能な目標だと考えています。
我々に野心が無いとは思いません。人々が我々に望むのは、有限実行であること。そして、それこそが我々がやろうとしていることなのです。
ソレル氏は4月に辞職して以来、WPPの方向性について批判的なコメントをしてきました。これについて、あなたの意見は?
公式にコメントすることはありません。
(文:ギデオン・スパニエ 翻訳・編集:田崎亮子)