WPPは新設した日本のCEO職に、エッセンス・グローバルCEOの松下恭子氏が就任すると発表した。同氏は現在拠点とするサンフランシスコから東京に戻り、日本市場におけるWPPの事業を統括、グループ全体の強化を図っていく。既に同グループのメディアエージェンシー、グループエムは傘下のエッセンスとメディアコムの合併を発表している。
日本の広告市場は510億米ドルで世界第3位。WPPは日本で15以上に及ぶエージェンシー −− AKQA、エッセンス、BCW、グループエム、オグルヴィ 、VMLY&R、ワンダーマントンプソンなど −− を展開しており、松下氏はそれらに所属する約1000人の従業員の指揮を執る。主要クライアントはアマゾン、デル・テクノロジーズ、ギリアド・サイエンシズ(バイオ医薬品)、グーグル、IBM、マース(菓子)、三菱、モンデレーズ、ネスレ、ファイザー、P&G、ソニー、トヨタ、ウーバーなど。
松下氏は過去にソニー・ヨーロッパのマーケティング及びコミュニケーション責任者、エレクトリック・アーツ社のEMEA(欧州・中東・アフリカ)・APAC(アジア太平洋地域)担当オンラインゲーム・マーケティング責任者などを歴任。2014年にエッセンスに入社し、APACの初代CEOとして11のオフィス −− 北京、バンガロール、デリー、ジャカルタ、メルボルン、ムンバイ、ソウル、上海、シドニー、東京など −− を統括、主要市場における同社のプレゼンス向上に貢献した。その後、初代グローバルチーフクライアントオフィサー(CCO)となり、サービス向上とクライアントとの関係深化に注力、オーガニック成長と新規事業獲得を牽引した。2019年にはグローバルCEOに就任、世界12カ国に点在する23のオフィスを統括した。
「日本は私にとってとても大切な国。今回の異動は千載一遇のチャンスで、大きな喜びを感じています」と松下氏。
「アジア太平洋地域(APAC)がWPPにとって大きな可能性を秘めていることは明白な事実。特に日本は有数のテクノロジー先進国で、素晴らしいクリエイティブ人材もいる。私にとってもWPPにとっても、実に適切なタイミングでの適切な再編。極めてポテンシャルの高い市場でWPPの事業を牽引できることは大変な名誉です」
同氏曰く、WPPグループはこの1年で日本の従業員数が大幅に増えた。それに即した成長を加速させるため、今後は「価値を生むコラボレーション」を実行していくという。
「前職ではAPACの数々のユニークな市場で、メディアとクリエイティブの事業を構築した。ビジネスと人材に関しては、この経験を大いに生かせると思います」
「過去に携わったゲーム事業から今誰もが注目するメタバースまで、先端のテクノロジーには強い魅力を感じます。また前グローバルCCOとして、強固で透明な、信頼性の高い関係をクライアントと構築することの重要性もよく理解しています」
WPPのマーク・リードCEOは、「強固な企業文化を築くという点で彼女は経験値と評価が高い。日本における我が社の事業を牽引できる、非の打ちどころのないリーダー」と話す。
「エッセンスCEOとして成功を収め、(彼女は)再びAPACを担っていく。世界第3位の経済力を持つ市場で、我々の従業員やクライアントに新たなチャンスを切り開いてくれると確信しています」
WPPは日本で初めてグループレベルのCEOを任命した。その目的は「成長機会を見出し、グループ内の有意義なコラボレーションや連携を促進し、豊かな歴史と独特の文化を持つ市場に事業投資を行う −− こうした新たな責任を明確にするため」(リード氏)だという。
(文:スレーカ・ラガヴァン 翻訳・編集:水野龍哉)