日清食品からは、どのような要望がありましたか?
チキンラーメンは元祖インスタントラーメンとして、58年間愛され続けているブランド。ともすれば、古いブランドであると思われてしまうという課題があり、これを打破して常に時代にマッチしたブランドとして新しく見えていくブランディングが必要でした。これまでのマス中心の広告展開の他にも、WEBで「バズる」ような、今の時代に合わせたコミュニケーションのチャレンジが求められていました。
このアイデアが生まれた経緯を教えてください。
今の時代に合わせたチャレンジがテーマでしたが、ブランドの保守的やおとなしいキャラクター性と、WEBでバズを起こすということには、正直なところギャップを感じていました。目新しいことをして話題化を図らずとも半世紀以上愛されている、ある意味硬派なブランドなので。
そこで、バズを起こすようなことを目的とするのではなく、ネタ的に手段として寄せ集めて扱い、そのギャップを生かした逆説的な企画を立てました。一時的な話題をとるよりも、ブランドが長く愛されることのすばらしさを伝えようと考えたのです。
日清食品の広告は、ユニークなセンスとシンプルなメッセージが異彩を放ってきました。そこにはどのような哲学が貫かれてきたのでしょうか?
日清食品の安藤徳隆社長には、世間からクレイジーと呼ばれるような人にしか世界は変えられないという思いがあります。その考えから、さまざまなユニークな表現に挑戦しながらも、掲げる「Beyond Instant Foods」という指針のもと、食品にとどまらない本質的で普遍的な価値を問うてきた。その姿勢が、シンプルかつ強いメッセージにつながっているのだと思います。
本題からそれる質問かもしれませんが、なぜ日本の広告には女子高生が多く登場するのでしょうか?
女子高生は多くの日本人が原体験として持つ、青春のモチーフとして受容性が高い。また、規律ある制服を着たその清廉性と、突飛なアイデアと組み合わせることで、面白いギャップが生み出しやすいからだと思います。
日本人にとって女子高生は、いつでも懐古したい心のロマンなのです。
広告主はトレンドを容易に追いかけすぎると考えますか? また、次にくると予想しているトレンドは何がありますか?
どんなに歴史のあるブランドだとしても、時代のトレンドを捉えて柔軟にコミュニケーションを変化させようとする姿勢は素晴らしいと思います。ただし、トレンドを取り入れたり話題をつくったりすることは、あくまで手法。それが目的化しないよう、本質的なところまできちんと伝えられる設計にすることが、我々の仕事だと思っています。
次のトレンドは分かりませんが、いつの時代もトレンドは人の普遍的な欲求が紐づいているものだと思います。見たいとか知りたい、知らせたいといった欲から逆算して設計された広告や商品は、トレンドまで昇華しやすいのではないかと思います。
この広告の制作について、他に何かコメントがあればお願いします。
クライアントはもちろん、広告業界に身を置く我々としてもチャレンジングな企画であったと思います。バズムービーを企画する側としては、マジシャンのタネ明かしのような、今後の自分の首を締めかねない企画であったと思うので、プランナーとして本当のチャレンジはこれからなのかもしれません。
(編集:田崎亮子)