外界から遮断された、静かな「聖域」 −− アウディが新型A8のテレビCMをスタートさせた。
制作はワイデン+ケネディ トウキョウ。同社は最近発表された「A7スポーツバック」のCMも手がけ、都内を駆け抜けるスーツ姿の男性が車と一体化するイメージを作り出した。
A8のCMでフィーチュアされるのは、静かな湖畔や都会を見渡す建物の屋上、荒涼とした海岸に置かれたサイコロ状のフレームの中で瞑想する1人の男性。やがて映像はA8の運転席に座る男性へと切り換わる。
キャンペーンは印刷媒体でも展開される予定。こちらはテレビCMとは別のイメージも用い、車をフィーチュアしていく。
Campaignの視点:
このCMもA7のCMも適度に抽象的で、抑制された作りになっている。更に車の機能ではなくコンセプトに光を当て、「心の平穏を得られる場」とアピールする点が一般の車の広告と一線を画す。
車に対する考え方は、「自由を謳歌するツール」から「静かでプライベートな空間」へと変わってきた。東京の交通渋滞は深刻で、車で移動する人々が運転の楽しみを感じられることは滅多にない。その代わり、満員電車で通勤する人々では味わえない空間の快適さと「思索の時間」を確保できる利点がある。車を所有することのメリットを見出しにくい昨今、「日常生活のストレスから解放される手段」として車をアピールすることは大きなセールスポイントとなるだろう。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)