「企業規模の大小にかかわらず、インスタグラムを利用してビジネスを拡大しようというブランドは、潜在顧客を見据えてユーザーと深い関係性を築くことが最も大切」。こう語るのはインスタグラムのプロダクトマーケティングディレクター、スーザン・バックナー・ローズ氏。
同氏はシンガポールでの記者発表で、「アジア太平洋地域でのインスタグラムの最大市場はインドネシア」と言及。その後Campaignの取材に応じ、「企業によるインスタグラムの利用は目覚ましく伸びており、非常に心強い」と語った。
「インスタグラムのクリエイティビティーは最新の『ストーリー』機能を中心に進化していますが、クリエイティブの質よりもユーザーとの関係性の方がより重要です」
インスタグラム上で企業の新しい試みを見るたび、同氏は仕事に満足感を覚えるという。プロダクトマーケティングチームは、こうしたコンテンツから何がビジネスを機能させるのか学び取れる。それでもやはり、「最も大切なのはユーザーの心に響くメッセージを送ること」と強調する。
「我々が重視するのは、コミュ二ティーやフォロワー、あるいは広告の観点から適切なコンテンツを適切な人々のもとに届けること。ブランドのメッセージを捉え、その目的を理解し、クリエイティブはそれらをきちんと反映しているか、ターゲット層にしっかりと届いているかを優先して考えます」
インスタグラムはこの6月、プラットホーム上の企業のプロファイルが過去1年間で800万件から1500万件にほぼ倍増したと発表。これを受け、インスタグラム上のアカウントを企業がビジネス面でもっと活用できるよう、新製品を求める顧客とより活発なインタラクションが可能なサービスを試験中だという。
その1つが、掲載された商品のタグをクリックすると名称やデザイナー、価格などの情報が得られるという機能。このサービスはアジア全域で展開予定だが、具体的な時期はまだ未定だそう。
アジアの中小企業の経済力の大きさを考えると、「それら企業がプロファイルをインスタグラムに投稿し、顧客インサイトを理解することが最も効果的な手法です」。
「企業にはインスタグラムの価値に着目してほしい。我々はフォロワーや『いいね!』の数、コメントの内容が全てと思っているわけではありません。企業には明確な効果を期待して、我々にアプローチしてもらいたい。我々への投資から最大限の対価を得てもらいたいのです」。
今や1日で2億5千万人ものアクティブユーザーを抱えるストーリー。その目覚ましい成長に企業も着目、パフォーマンスマーケティング(成果報酬型マーケティング)や広告ツールをフィードに組み込むことで活用を図る。
「ストーリーを展開し始めた当初は、アクティブユーザーの3分の1が企業の人々でした。彼らの多くは我々の有料メディアを活用する準備が既にできていたのです。とは言っても、ストーリーはまだ開始から1年余。ビジネスの基盤は依然、ニュースフィードやインフィード広告ですが」
アジア太平洋地域でのストーリーの躍進は特に目覚ましく、それに比べスナップチャットの低迷は否めない。この点を問うと、「我々はインスタグラムのことだけを考えているので、競争相手のことはあまり関心がありません」と慎重に答える。
インスタグラムの更なる特徴は、ユーザーや企業からの懸念に応えて「ブランドコンテンツの透明性を大幅に高めたこと」。
「企業からは(投稿したブランドコンテンツが)どのような価値を生み出しているのかよく分からない、コミュニティーの側からはなぜ同じ投稿ばかり見るのか、それが広告かそうでないのか分かりにくい、という声が上がった」のがその要因だ。
今ではブランドコンテンツの最後に「~と協力(in partnership with)」という文言が入り、ユーザーはインフルエンサーとブランドの間のスポンサーシップや金銭関係の有無が分かるようになった。
「ブランド側から見れば、こうしたパートナーシップで得る価値の透明性は十分に高いものでしょう」
(文:ファイズ・サマディ 翻訳:岡田藤郎 編集:水野龍哉)