日本の若者たちのクルマ離れが叫ばれて久しい。だが、実際にそうなのだろうか。国内における新車販売台数は、昨年度526万台。ピーク時の1990年前後に比べると7割弱だが、2017年に比べると微増し、3年連続で増加傾向にある。また、2017年の20代若者のクルマ保有率は57%で、前年の48%からやはり増えている。
こうした数字を見る限り、「若者はクルマに興味なし」とは断言できないようだ。カーシェアリングの普及など価値観の変化はあれど、クルマを運転したいと考える層は確実に存在する。
こうしたオーディエンスをターゲットにしたのが、今月スタートしたアウディA1スポーツバックのキャンペーンだ。コンセプトは、「この世のすべてを楽しみつくせ」。ポジティブに生きようとする若者たちが時間とお金を費やす音楽、ファッション、スポーツ、旅を切り口に設定、様々なシーンでの同車との親和性を訴求する。制作はワイデン+ケネディ トウキョウ。
キャンペーンの展開も、これまでとは異なるメディアを活用する。従来型のテレビやOOH(Out of Home、交通・屋外広告など)、アドトラックなどに加え、SNS、デジタルバナー、スポティファイなど多様。特設サイトも公開し、各分野のアイコンとのコラボレーションやプレゼントの展開などで若年層への浸透を図る。
同車の価格はアウディの他のラインよりも抑えめ(365万円〜)。ボディカラーも鮮やかな色を揃え、デザインでもスポーティさを前面に出して躍動感を演出する。技術面でもアシスタンスやセーフティ機能を強化、ドライビングエクスペリエンスの快適さをうたい上げる。
Campaignの視点:
通常のクルマのCFとはやや一線を画す作品だ。現代の若者のライフスタイルをテーマにしたことで、動画全般にわたって「カルチャー色」が濃く漂う。デモのシーンも挿入されるが、こうした描写はクルマのCFにあっては出色。
それぞれのアクティビティーとクルマとの相関性の密度がいま一つだが、時代の断片をスタイリッシュに描くところはファッションブランドなどのCFを想起させる。ターゲットもメッセージも明確。受け手となる若年層も好意的に反応するだろう。
(文:水野龍哉)