マーケターにとってこの数年の最大の懸案事項はブランドセーフティだが、その状況は依然として変わっていない。
アドベリフィケーション(広告の配信検証)を手がけるダブルベリファイ(DoubleVerify)の調査で、ブランドは2019年、偽情報のサイトに掲載される広告の対処に2億3500万米ドル(約258億円)を費やしたことがわかった。
特に昨年は、新型コロナウイルスや米国大統領選挙に関する偽情報が急増。ヘイトスピーチなどにまつわる有害コンテンツも増加した。ティックトック(TikTok)をはじめとするプラットフォームは偽情報の取り締まりを強化、提供する情報の検証能力を高めたが、歯止めはきかなかった。
大統領選挙に関する偽情報は、ソーシャルメディア上で対前年比83%増。新型コロナウイルスのワクチンに関しては昨年11月9日、ファイザー社とバイオンテック社が共同開発ワクチンの有効性は90%以上と発表すると、前年比400%にも達した。
ヘイトスピーチはブラック・ライブズ・マター(BLM)運動が全米に広がった昨年6月、前年比212%に急増。8月下旬には一旦沈静化したが、9月に第1回大統領候補者討論会が開かれると再び増加した。
「ブランドにとっての問題は、プログラマティックバイイングではキーワードブロッキングが甘くなり、広告の配信先も完全に把握できないこと。よって事態を悪化させてしまう」と話すのはダブルベリファイのシニアポリシーマネージャー、ザカリー・ヘクト氏。
偽情報は大きな出来事・ニュースが起きた際に急増するケースが多い。ネット上の信用性の低いニュースやトピックスは除外していくことが、ブランドにとって重要となる。
「こうしたトピックスを避けるには、必ずしも広範なキーワードブロッキングを用いる必要はありません。その代わり、より繊細なアプローチが求められる」(同氏)
ページのコンテクストを提供したり、サイトないしアプリのエクスクルージョン(除外)リストを頻繁に更新するコンテンツを機密扱いにすることもその1つだ。また、信用性の高いニュースサイトを「例外ページ」として加えることも有効だろう。
「情報システムの中における自らの役割と、信頼できるニュースコンテンツのサポートがブランドセーフティにつながることを我々のクライアントにはよく理解してほしい」
(文:サブリナ・サンチェス 翻訳・編集:水野龍哉)