無煙たばこの競争が激化する中、BATがコーポレートブランディングの浸透を図る初のテレビ広告をスタートさせた。
15秒間のCFは、喫煙者と非喫煙者が共生できる社会をうたったもの。「両者が共に、楽しく生きていく(enjoy together)未来を作りたい」と同社はコメントする。
BATは昨今、フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)の「スティーム(Steem)」「アイコス(IQOS)」に対抗する加熱式たばこ「ヴァイプ(Vype)」「グロー(glo)」の販売に注力する。このCFはそれらの製品を意識したものと言えよう。グローは2016年に発売されたが、アイコス同様に日本市場でデビューを果たした。政府が全株の3分の1を保有する日本たばこ産業(JT)もこの6月、「プルームテック」という新製品を発売。ロイターによれば、同社は今年中に更なる製品の発表を予定しているという。
たばこ会社はテレビ広告でコーポレートブランディングを発信できても、法令で自社製品やブランドの直接的な宣伝は禁じられている。その妥協策としてBATはCFの中で「社会的環境」をアピール、登場人物に喫煙者 −− 無煙たばこの愛用者 −− がいることを視聴者に暗示する。CFの最後で2人の登場人物がたばこを吸うように手を上げるシーンがそれだ。
BATのスポークスパーソンは、「不快なたばこの煙や臭いで他人を患わすことは許されず、たばこと健康への潜在的リスクを減らす取り組みを続けていくという我が社のコーポレートメッセージを伝えるため」と語る。同社の無煙たばこを他社製品とどのように差別化するかに関しては、コメントを避けた。
このCFは、JTのコーポレートブランディングよりも意図が明確だ。JTは昨今、喫煙のエチケットだけに限らず、同種の包摂性をアピールする様々なテレビCFを放映している。
PMIのスポークスパーソンは先月、「無煙たばこのマーケティングは世界各地で規制されている。今後はこうした法令を変えていく活動を行っていきます」と語った。
Campaignの視点:
長年、テレビで存在感を発揮してきたたばこ会社はJTのみだった。だが“潜在的に健康への害を減らす製品(potentilly reduced-risk products = PRRP)”という新たな成長分野で、市場では規制をよそに多くのプレーヤーが競合しそうだ。
BATの発するメッセージは、「誰ものけ者にされたくない」ということ。すなわち、無煙たばこならば外食の際にいちいち店の外に出る必要はなく、会話の妨げにもならない。こうしたアピールは喫煙者だけでなく、その友人たちにも魅力的に響くだろう。BATの無煙たばこは市場シェアでPMIのアイコスよりも伸びが鈍いが、やや先行して発売されたJTのPRRPを上回る。
だがこのブランディングは、決して独創的とは言えない。JTはテレビを通じ、巧妙な作品で業界でも指折りのブランディングに成功している。それと比較すれば、BATの試みはまだ未熟だ。いずれにせよ両社にとっての大きな課題は、一般の喫煙者たちに企業ブランディングや新製品をどれだけ訴求できるかだろう。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)