Campaignはニールセンと共同で「アジアのトップ1000ブランド」を、アジア太平洋地域13カ国で実施。日本人が最も良いと思うブランドに、3年連続でパナソニックが選ばれた。(調査方法の詳細は文末に記載)
事業のモダナイズ(近代化)に苦戦し、商品のコモディティー化も足かせとなっているパナソニックだが、品質や信頼性が大きく寄与した。同社はまた、オープンイノベーションの推進のため、柔軟な体制づくりも目指している。
パナソニックの首位独走よりも興味深いのは、アップルがソニーを退け第2位に浮上したことだ。これまで日本のランキングで海外ブランドが首位に立ったことはなかったが、今後はその可能性も大いにあり得る。
日本のトップ10ブランド
1. パナソニック
2. アップル
3. ソニー
4. 明治
5. 森永製菓
6. 資生堂
7. サントリー
8. 東芝
9. ビザ
10. シャープ
「一部の例外を除いて、海外ブランドと国内ブランドを明確に区別した時代は終わったのです」と語るのは、アップルの広告を担当するTBWA HakuhodoのCOO、井木クリストファー啓介氏だ。「肝心なのは、商品やサービスが人々の要求を満たし、人々の価値観と一致することです」
トップ10のうち8つが日本のブランドだが、品質や流通量、価格などを考えれば納得のいく結果だろう。最も驚くのはビザ(昨年33位→9位)が、現金主義の日本でのカード利用拡大を受け、ランクが急上昇したことだ。同時にマスターカード(126位→23位)も大きく躍進した。
スマートフォンのカメラ機能が進歩を遂げ、キヤノン(7位→17位)とニコン(70位→105位)は窮地に立たされている。その一方で、ランクを回復するブランドもある。シャープ(16位→10位)は、鴻海精密工業に買収された直後の昨年4月に、ソーシャルメディア分析を実施したコンサルティング会社プロフェットから「落日のブランド」と評されたが、今年は順位を上げている。
テクノロジー分野では、グーグル(24位→28位)がヤフー(25位→24位)の後塵を拝することとなった。フェイスブック(92位→98位)には大きな変化が無かったものの、ツイッター(79位→103位)はランクを大幅に下げた。ツイッターにとって日本はシェアの高い国の一つだが、新たなユーザー獲得が急務となっている。ツイッターは今年の初め、日本では初となるブランドキャンペーンを実施した。
アマゾン(22位→26位)は今年も楽天(42位→49位)をリードしたが、両者ともランクを少し下げた。LINE(167位→162位)の順位はわずかに上昇したが、驚くべきはそのサブブランドであるLINE TAXIが、初登場で32位という快挙を遂げたことだ。法規制との関連でまだほとんど活動が始まっていないUberが29位にランクインしたのは、その良し悪しは別にして、世界で大いに宣伝されたことが理由にあるだろう。3月に認可されたばかりのAirbnbはブランド確立まで時間が掛りそうだが、「民泊」という新しい概念の分野で415位にランクされたのは評価に値する。
概略:
- 日本人は楽天(49位)よりもアマゾン(26位)を好む。
- 海外ブランドでトップ10入りしたのは、アップル(2位)とビザ(9位)の2社。
- フェイスブック(98位)は依然として日本人が好むソーシャルネットワーク。
- Uberは初登場で29位。これはLINE TAXI(32位)より少し上位。
- BMW(197位)はメルセデス(236位)を抜き、日本人に最も好まれる外国車ブランドとして再びリードした。
日本のブランドは、成長を求めて海外市場に目を向けているように見える。しかし日本は、既存のブランドにとってはもちろんのこと、シェアリングエコノミーのような全く新しい分野の企業にとっても、まだまだ十分チャンスがある市場だ。高齢者の比率が高まりつつあるが、一人あたりの消費額は他のアジアの国々に比べて圧倒的に高い。アジア諸国の市場が低迷する中、海外ブランドは再び日本への投資を強化している。
「日本には成長分野が存在します。ただ、あらゆる分野が成長しているわけではないのです」と、マッキャン・ワールドグループ ジャパンのチーフ・ストラテジー・オフィサー、ジョン・ウッドワード氏は話す。「成長率が低いからといって、大きく成長している分野が無いということではありません。市場規模が巨大なので、シェアを少し伸ばすだけでも、その影響は大きくなります」。今後の成長分野としてウッドワード氏は、クレジットカード、電子決済、機能性食品、電子商取引、医薬品を挙げる。
日本市場での成功を目指す海外ブランドに必要なことは、コミットメントとローカリゼーション(現地化)だ。「優れた企業はまず基盤作りに投資します」とウッドワード氏。「不動産取得、合弁・買収、IT基盤の構築などへの投資で、競争力のある商品・サービスの提供が可能となり、経済面で確固たる地位を築くことができるのです。日本は気軽に参入し、広告を出せば早々に収益が上がるという市場ではありません。長期戦の覚悟が必要なのです」
ランキングの調査方法
「アジアのトップ1000ブランド」は、Campaign Asia-Pacificとニールセンがインターネットで共同調査を行い、そのデータ結果を集計したもの。対象となった市場は中国、インド、日本、インドネシア、香港、シンガポール、台湾、マレーシア、韓国、タイ、ベトナム、オーストラリア、フィリピン。調査対象者は中国が1200人、インド800人で、それ以外の市場は400人。
対象者は市場の人口比に合わせ、年齢・性別・毎月の世帯所得といった属性から抽出。14の主要なカテゴリーと73のサブカテゴリーで、次の2つの質問を行った。
1. 次のカテゴリーの中で、最も優れたブランドはどれだと思いますか? 「優れた」とは、ご自身が最も信頼できるブランド、あるいは最も評判が良いと思われるブランドを意味します。
2. 同じカテゴリーの中で、2番目に優れたブランドはどれだと思いますか?
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:岡田藤郎 編集:田崎亮子)